今日の選択で、夏の体を整える。 暑さと上手につき合う、夏の生活習慣

SUMMARY
  • ・暑熱順化は、夏を過ごすためのウォームアップ
  • ・日常の動きから、暑さに慣れる
  • ・暑い季節こそ、湯船の習慣を
  • ・強い暑さには、体の内側から冷やす方法も
  • ・水分だけでなく、ミネラルとビタミンCにも目を向ける
  • ・暑さの中でも、無理なく続けられることを

少し外を歩いただけでぐったりする。夜になっても体に熱がこもり、なかなか寝つけない。そんな夏の過ごしにくさに備える方法のひとつが、体を少しずつ暑さに慣らす「暑熱順化」です。

夏を快適に過ごす方法は、一つではありません。朝の散歩を選ぶ日。お風呂でゆっくり汗をかく日。食事を整える日。
「今日は何を選ぶか」そんな毎日の積み重ねが、暑さと付き合う体をつくります。日本栄養大学 特任教授で、博士〈スポーツ健康科学〉の石川泰弘先生に伺いました。

暑熱順化は、夏を過ごすためのウォームアップ


――まず、暑熱順化とはどのようなものなのでしょうか。

「暑熱順化は、スポーツでいうとウォームアップのようなものです。体を少しずつ暑さに慣らすことで、気温の上昇にも対応しやすくなります。人間は環境に適応する動物ですが、まったく違う環境に入って、すぐに対応できるわけではありません。暑熱順化も、一気にではなく、徐々に暑さに慣らしていくことが大切です」

私たちの体は、暑さを感じると皮膚の血流を増やし、また、汗をかきます。その汗が蒸発するときに体の熱が奪われることで、体温の上昇を抑えています。
一方、冷房の効いた室内で過ごす時間が長く、汗をかく機会が少ないと、こうした体温調節の働きが十分に発揮されにくくなります。

「暑熱順化では、“寝ている汗腺を起こす”ようなイメージで考えると分かりやすいと思います。汗をかきやすくなることは、体温を調節しやすい状態になるということです。ただし、たくさん汗をかけばよいわけではありません。体中の体温(深部体温)が徐々に温まり、じんわり汗が出るくらいで十分です」

暑熱順化は、暑い場所で無理をするための訓練ではありません。軽い運動や入浴によって汗をかく機会をつくり、体温を調節する働きを少しずつ目覚めさせていくことが基本です。

日常の動きから、暑さに慣れる


――暑熱順化のためには、どのくらいの運動が必要ですか。

「運動というと、『ハードなことをしなければいけないのか』と思う人がいますが、そんなことはありません。エスカレーターではなく階段を使う。いつも車で行く買い物へ歩いて行く。それだけでも少し心拍数が上がり、体が温まります」

運動の強さは、少し息が弾むものが目安です。1日合計30分ほどを目指し、一度に時間を取れなければ、何回かに分けても構いません。

「朝の比較的動きやすい時間帯に散歩をしたり、暑くなる前に買い物を済ませたりするとよいでしょう。危険な暑さの日や体調がすぐれない日は、屋外での活動を控え、室内で軽く体を動かす。気温や湿度、その日の体調を見ながら、安全に続けることが大切です」

暑い季節こそ、湯船の習慣を


――夏の入浴では、どのようなことを意識するとよいでしょうか。

「暑熱順化のために熱いお湯へ入ればよいと思う人がいますが、熱いお湯では皮膚の表面ばかりが熱くなり、長く入っていられません。深部体温が十分に上がる前に、『もう耐えられない』となってしまいます。
目安は、38〜40℃程度の心地よい温度で10〜15分ほどです。夏のお風呂が暑くて嫌だという人は、冬と同じ温度設定のままなのかもしれません。その日の気温や体調に合わせて温度を下げ、のんびり入ってください」



心地よい温度の湯船につかることで、深部体温をゆっくり上げ、じんわり汗をかく機会をつくることができます。入浴前後には水分をとり、その日の体調に合わせて無理のない範囲で続けましょう。

――睡眠につなげるためには、入浴のタイミングも大切ですか。

「人は、体温が下がってくるときに眠くなります。お風呂で一度体温を上げると、その後、広がった血管から熱が逃げ、体温が下がっていきます。その流れを睡眠に生かすことができます。
入浴後はすぐに布団へ入るのではなく、90分ほどを目安に時間を空けると、体温が下がるタイミングと眠りへの切り替えを合わせやすくなります」



寝苦しい夜は、室温だけでなく湿度にも目を向けます。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体温も下がりにくくなるため、冷房とあわせて除湿を活用することも大切です。
眠っている間にも汗をかくため、就寝前には水分を補います。夜中のトイレが気になる場合は、寝る直前ではなく、1時間ほど前に水やお茶を飲んでおく方法もあります。

強い暑さには、体の内側から冷やす方法も


――厳しい暑さの中で運動や屋外活動をするときは、どのような対策ができますか。

「暑熱順化をしていても、本当に暑い環境で体を動かせば、体の中に熱がこもることがあります。そんなとき、体の内側から深部体温を下げる方法として、アイススラリーがあります。アイススラリーは、細かな氷の粒と液体が混ざったシャーベット状の飲み物です。細かな氷が体の中で溶けながら熱を奪います。

開発にあたっては、熱を外へ逃がしにくい防火服を着る消防士の暑熱対策にも効果的であるとの実証研究もされおり、現在では、スポーツ選手や屋外で運動する人の暑熱対策にも活用されています。本当に暑い環境で体を動かす場合には、ひとつの選択肢になります」

暑熱順化は、どんな暑さにも耐えられる体をつくることではありません。その日の気温や活動量に応じて、休む、涼しい場所へ移動する、体を冷やすといった判断も必要です。

水分だけでなく、ミネラルとビタミンCにも目を向ける


――汗をかく季節は、水分をどのように補えばよいでしょうか。

「普段の水分補給は、水やお茶、麦茶などで構いません。ただ、たくさん汗をかいたときには、水分と一緒にナトリウムなどのミネラルも失われます。発汗量や体調に応じて、塩分やミネラルを含む飲み物を取り入れることも必要です。
ミネラルは、体の機能を動かす潤滑油のようなものです。水分だけでなく、汗とともに失われたものにも目を向けてほしいですね」

一方、経口補水液は日常的な水分補給とは役割が異なります。

「経口補水液は、脱水が疑われる“まさかのとき”に使うものです。普段の水分補給とは分けて考えた方がよいでしょう」

――水分補給に加えて、食事ではどのようなことを意識するとよいですか。

「暑いと、麺類だけ、パンだけというように、簡単なもので済ませがちです。でも、食べる量や品数が減れば、ビタミンやミネラルをとる機会も少なくなります。
まずはきちんと食べることが基本です。そのうえで、肉や魚、豆類、野菜、果物などを組み合わせ、必要な栄養素を補っていくことが大切です」



夏のコンディションを整えるうえでも、まず大切にしたいのは、日々の食事です。主食・主菜・副菜を意識しながら、野菜や果物、肉や魚などをバランスよく取り入れることで、ビタミンやミネラルを含むさまざまな栄養素を補うことができます。

「ビタミンやミネラルは、それだけを単独で考えるのではなく、食事からとった栄養素を体の中で生かすために必要なものです。食事を基本にしながら、不足しやすいものを補うという考え方がよいと思います」

水分とともに汗で失われるものを意識し、食事の偏りを見直すことも、夏のコンディション管理の一部です。そのうえで、食事だけでは不足しやすい栄養素については、必要に応じてサプリメントを活用することも選択肢のひとつです。

暑さの中でも、無理なく続けられることを


暑さが続く今からでも、暑熱順化を意識することはできます。朝の比較的涼しい時間に歩く。心地よい温度の湯船につかる。水分をこまめにとり、食事の内容を振り返る。暮らしの中で続けられることから始めてみましょう。

大切なのは、決めた方法を無理に続けるのではなく、気温や湿度、その日の体調に合わせて調整することです。危険な暑さの日には運動を控え、体に熱がこもっていると感じたら、涼しい場所へ移動して体を冷やす。暑熱順化をしているからといって、暑さを我慢する必要はありません。

できる範囲で体を動かし、入浴、睡眠、水分、食事を整えることを、この夏の習慣として重ねていきましょう。


石川 泰弘 特任教授 博士




PROFILE
日本栄養大学 特任教授。博士〈スポーツ健康科学〉。温泉入浴指導員〈厚生労働省規定資格〉、睡眠改善インストラクター〈日本睡眠改善協議会認定資格〉。2006年よりバスクリンの商品および企業PR・IR活動を担当し、「きき湯」シリーズをヒット商品へ導く。「お風呂教授」として、テレビ、雑誌、Web、ラジオなど幅広いメディアで活躍。著書に『バスクリン社員が教える究極の入浴術 お風呂の達人』(草思社)、『バスクリン社員がそっと教える 肌も腸も健康美人になる入浴術26』(スタンダードマガジン)、『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』(日本文芸社)、『たった一晩で疲れが取れる睡眠法』(ゴマブックス)など。

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